庭は、
足す仕事より引く仕事
十年手を入れつづけた庭。「木を植えた日より、枝を落とした日のほうを覚えている」
約束の時間より十分早く着いてしまって、門の前で待っていた。庭からは、水の音だけが聞こえていた。
案内された縁側には座布団が一枚だけ置かれていて、あとは何もない。何もないことが、ずいぶん気持ちよかった。
そう言って、庭の右奥を指した。苔だけの一畳ほどの平地。言われるまで、視界に入っていながら「見て」いなかった場所だ。
四十代になってから、仕事でも同じことを考えるようになった。何を載せるかより、どこを空けておくか。空きは、雑に扱うと「手抜き」に見え、丁寧に扱うと「余裕」に見える。その差はたぶん、意図の有無だけだ。
帰り道、その言葉を何度か口の中で転がした。端をきちんと切る。中は放っておく。おそらくこれは、庭の話ではない。
庭師。関東を中心に個人邸の作庭・手入れを手がける。※本ページはデザイン検討用のモックであり、人物・発言はすべて架空。